さつき会ブログ

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歌舞伎の楽しみ方 自慢篇

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歌舞伎や能について詳しい原田紀子さん(71年 理学部卒)の鋭く興味深い視点から、「歌舞伎の楽しみ方」について寄稿していただきました。




歌舞伎の楽しみ方 自慢篇

歌舞伎座

写真 歌舞伎座


「菊吉爺(きくきちじじい)」という言葉があるのを最近知りました。
今は亡き六代目尾上菊五郎と初代中村吉右衛門が最高の役者で、「自分は見たことがあるが、お前たちは無いだろう」とか「今の役者はとても菊吉に及ばない」というような意味らしいです。
また九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の場合は「團菊爺」だそうです。

歌舞伎故人

写真 歌舞伎座3階には在りし日の名優達の写真が展示されています。


十三代目團十郎襲名公演の助六を見て、私は「十一代目婆」だわと思いました。
十一代目團十郎は最高に芸が上手い役者というわけではありませんが、最高に美しい役者で、声もカラカラとした男らしい声でした。亡くなる1年くらい前、丁度東京オリンピックの時で外国人向けに上演していたのではないかと思われる彼の助六を私は見ることができたのです。

勤め先の先輩に神田の生まれの20歳位年上の方がいました。
彼女の自慢は十五代目市村羽左衛門の舞台を見たことでした。花道の揚幕から出てくるだけであたりがぱーっと華やかに明るくなるのだそうです。
逸話に照明係がスポットライトをどのように当てましょうかと十五代目に聞いたところ、ライトなんかいらないよ、俺が光るんだからと言ったというのがあります。
彼女はさしずめ「十五代目婆」でしょうか。


助六揚巻

写真 孝夫・玉三郎の「助六」(『演劇界』平成3年4月号)

歌舞伎役者の条件は、一声(いちこえ)二顔(にかお)三姿(さんすがた)といわれています。今この三拍子揃った役者は、片岡孝夫(現仁左衛門)、女形では坂東玉三郎でしょう。
その素晴らしさは1975年に「桜姫東文章」を二人に演じさせることを目的として「T&T応援団」が、いわゆる後援会とは全く別に、結成されたことからも分かります。この4月に二人がお富与三郎の「与話情浮名横櫛」を歌舞伎座で上演するそうです。今は孝夫ではなく仁左衛門なので正確ではありませんが「孝玉婆」になれる残り少ない機会です。ぜひ観劇されることをお勧めします。

原田紀子



今回の「自慢篇」に引き続き、これからも独自の視点からのご紹介を楽しみにしています。
原田紀子さん : 国立科学博物館に勤務され、「西岡常一と語る木の家は三百年」 農文協、「着物と日本人」 平凡社、「能への扉」 淡交社などの著書があります。

(担当:Giglio)



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すみれの花咲く頃〜私のおすすめ、宝塚歌劇団〜

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宝塚衣装
(宝塚大劇場(写真撮影可のスペース)で展示されている衣装)

若山彩見と申します。2014年教育学部卒です。
ふだんは居住地つくばの魅力について語らせていただいておりますが、
ジャンル問わず好きなものの紹介、ということで、わたしの大好きな宝塚を紹介させてください。

当方、大学生のときに初観劇して以来ゆるっと宝塚が好きなヅカオタ(宝塚ファンの俗称)です。
全組観劇派ですが、特にひと推しは雪組。
今年の4月に望海風斗さんと真彩希帆さんが退団された時はしばらく立ち直れませんでした。

さて。宝塚歌劇団ときいて、皆さまはどういったイメージを浮かべるでしょうか。
宝塚は1914年に初の公演を行って以来100年を超える歴史をもつ、タカラジェンヌと呼ばれる未婚の女性だけで構成された歌劇団です。
花・月・雪・星・宙の5組を中心に、年間をとおして兵庫県の宝塚大劇場と東京日比谷の東京宝塚劇場で公演を行っています。
公演はおおむね2本立てで、1部がミュージカル、2部がレビューと呼ばれるショーで構成。
チケット代は3000円代から1万円代と幅広く、演劇界のなかでは手の届きやすい値段となっています。

100年を超える娯楽ですから、その魅力は数知れません。
パッと思いつくだけでも、「華やかさ」「夢の世界」「徹底的なファン志向の運営」などでしょうか(余談ですが、コロナ禍の混乱における劇団の運営は素晴らしいものでした。)
こういった宝塚の魅力はたくさんありますが、個人的には「人間の意志の表象」がもっとも大きな魅力だと考えています。

自分がなぜこんなにも宝塚に夢中になっているのか。
その問いを掘り下げていったときに、「人間の意志の表象」という答えにわたしはたどり着くのです。

「人間の意志の表象」とは、抽象的な表現になってしまいますが、2点に分解できます。

1点目は、その舞台に立つまでに個人の強い意志を必要とするところ。
どのエンターテインメントでもそうですが、特に宝塚においてはそれは大きな特徴のひとつです。
ご存じの方も多いと思いますが、タカラジェンヌとなって宝塚歌劇の舞台に立つためには、宝塚音楽学校を卒業しなければなりません。
この宝塚音楽学校、非常に倍率が高く難関なことで有名で、東大と倍率が比べられるほど。「東の東大・西の宝塚」と言われます。
タカラジェンヌとなるためには、この宝塚音楽学校を明確な意思をもって受験し、その後の厳しい切磋琢磨を乗りこえなければいけません。
そもそもタカラジェンヌとなるまでに個人の強い意志が必要とされるのです。そのため、初舞台生の口上は毎回多くのファンを泣かせます。

2点目は、タカラジェンヌとなったあとも、ことに「男役」は、個人の強い意志を基にその独自の芸術を極めていくところ。
タカラジェンヌは男役と娘役に分かれて構成されています。
舞台上で男性を演じる男役は、オンのみならずオフでも男役としてのふるまいを求められるのです。
けっして男性ではありません。男性をめざすのではなく、「男役」として道を追求していくのです。
そのもともとの性別を乗りこえて独自の美しさ・格好良さを追求する様相は、それ自体が人間としてあまりにも素晴らしい。
宝塚の舞台のフィナーレには、毎回この男役の皆さまによる群舞があるのですが、その美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。
「人間は持って生まれた性別すら乗り越えて美しさを追求できるのだ」と、毎回心を打たれるのです。
性別を乗りこえる娯楽としてはもうひとつ、歌舞伎が有名ですが、
宝塚が歌舞伎と異なる点は、本人が明確な意思をもって志さなければ、そのスタートラインにすら立てないところです。
生まれ持った家で決まらないところが、人間の意志の強さをより一層際立たせるのではないでしょうか。

また、宝塚はジェンダーの観点から視ても大変面白いものがあります。
もともとは全員が女性のうえで、あらためて男役と娘役に分かれて世界観が構成されますので、ファンは自然と日常におけるジェンダー規範について、意識的に・無意識的に、何度も問いかけられます。
男役と娘役の役割としての規範は、舞台の上でも舞台を下りた後でもはっきりしていて、劇団において様式美となっていますが、
その規範の在り方の是非、その規範を踏まえたうえでのメタ的な挑戦をする意欲作やスターなど、劇団全体がまるでジェンダーについての壮大な思考実験をしているかのようです。
ジェンダーギャップ120位の我が国でよくぞこの娯楽演劇が100年以上も生き残ってくれた、と驚かずにはいられません。
性別を自由自在に行き来してみせるスターを集めた劇団。
家父長制の強い国だからこそ、こういった娯楽がうまれ、根強い人気を博してきたのかもしれません。

最後に、東大と宝塚の意外な関係について、2点触れさせてください。
まず、2021年11月から宝塚大劇場で花組「元禄バロックロック」が上演予定ですが、本作は東大出身の演出家・谷貴矢先生の宝塚大劇場でのデビュー作です。
リサーチ不足かもしれませんが、東大出身の宝塚歌劇演出家は谷先生がはじめてではないでしょうか?

また2019年度には、当時教養学部の國頭真理子さんが、宝塚歌劇をテーマにした卒業論文で東京大学総長賞を受賞しました。
タイトルは『〈娘役〉のクィアネス——花總まりを例に』。
宝塚歌劇での伝説のトップ娘役・花總まりに注目し、娘役の女性性がジェンダー規範や異性愛のシステムを撹乱するように作用しうることを論じた意欲作だそうです。

長くなってしまいました。
ご興味を持ってくださった方は、ぜひ一度観劇をご検討くださいませ。
宝塚といえばチケット難のイメージが強いかもしれませんが、兵庫県の宝塚大劇場であれば意外とチケットが取れたりします。
ほかにも、「宝塚に興味がある」と日常から呟いていれば、身近なヅカオタがきっとチケットを取ってくれます。ヅカオタにはそういう習性があります。

最後におすすめの作品を紹介して、終わりとさせてください。
最近の宝塚歌劇の作品はほとんどがDVD・Blu-ray化しています。劇団公式通販のほか、Amazonなどでも買えますので、機会があればぜひ一度お手にとってみてください。
関連情報
花組「元禄バロックロック」
圀頭真理子氏卒業論文『〈娘役〉のクィアネス——花總まりを例に』
2021年雪組公演 『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
2018年月組公演 『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』
2017年月組公演 『グランドホテル』
2020年宙組公演『アナスタシア』
2021年雪組公演 『ほんものの魔法使』

宝塚
(写真は生後1か月で宝塚大劇場に遠征したときのマイベイビーです。)

若山彩見
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