さつき会ブログ

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「まだ見たことのないピカソ」を見た

美術館さんぽ

国立西洋美術館
ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

~2023年1月22日まで~


12月の晴れた日、上野の国立西洋美術館を久しぶりに訪れました。「まだ見たことのないピカソ35点が日本初公開」という言葉に惹かれて。
ドイツ生まれの画商ベルクグリューン氏の元コレクションの中からピカソ、マチス、クレー、ジャコメッティ等の作品が97点出展されていて、内76点が日本初公開の作品だということです。


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チケットはオンラインで予約。入り口は人も少なく、これはゆっくり見られると思い、長谷川博己氏のナレーションの流れる音声ガイドの器械を手に、中に入ってみると・・・ 静かに絵に見入る大勢の人々。

目を上げると作品に撮影禁止のマークが。ということは、撮影禁止のマークのない作品は撮影可能ということかもしれない、と周囲を見回すとスマホを絵に向けている人たちがいます・・・。
初めは遠慮がちに、鑑賞する人々の後ろから「座るアルルカン」を撮影しました。
絵画に関する造詣が深いわけでもなく、他の鑑賞者に気を遣いながらのスマホでの撮影なので画像も欠けていたり曲がっていたり。そんな私の眼で見た展覧会の様子をお伝えします。

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1 ピカソが描いた二枚のドラ・マール

ピカソの恋の多さはあまりにも有名です。そして女性が変わるごとに作風が変わったとも言われています。
今回の展覧会で特に目を引いたのは次の二つの作品。モデルが、ドラ・マールという女性であること、そして今回の展覧会の大きなポスターに使われているという共通点があります。

キュビズムの人物像の特徴は、一人の人物を多視点から描いているところにあると言われます。小学校時代、キュビズムに魅せられた美術の先生に、1枚の絵に正面と横顔を組み合わせた絵を描くようにと言われて苦戦したことがありました。もちろん人の内面の多面性など全く分からない私の描いた絵は、単にバランスの取れない奇妙な失敗作に過ぎなかったのを覚えています。
しかし、間近に二つの作品を見た時に、ピカソの思いがほんの少しですが、伝わってきたような気がしました。

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「緑色のマニュキュアをつけたドラ・マール」(1936年)

彼女の右半分は目を見開き真実を見つめるかのようです。しかし左半分は現実から目を背け、遠くにある何かを凝視しているように見えます。そして、どちらの目も美しい。
絵の題名である緑色のマニュキュアをした指は左右4本ずつしかなく、直線で不自然な形をしています。この指から、ピカソは何を伝えたかったのでしょうか?

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「黄色のセーター」(1939年)

彼女の顔の右半分は、意志の強い目が正面を見据えていますが、左半分の憂いを秘めた目は心の奥に向かっているように見えます。
指は5本ずつありますが、右手はつややかで直線的で、左手は汚れ、傷つき、曲がりくねり、左右共に不自然な形をしています。黄色のセーターの網目は丁寧に描かれていて、左側からは体のまろやかさが伝わってきます。

美しかったに違いないドラ・マールはこの二つの絵が完成した時、どう思ったのでしょうか? 不自然な自分の姿に驚いて、不満に思ったのでしょうか?
ドラ・マールとピカソの関係は1936年~1943年という短い期間だったそうです。しかし、ドラ・マールはピカソと別れたのちもこの絵を大切に保管し続けて自宅のリビングルームの暖炉の上に飾っていたということです。彼女にとってこの絵は、第二次世界大戦の不安や恐怖の中をピカソと共に生き抜いた思い出が刻まれた、何物にも代えがたい宝物だったのでしょう。

2 ピカソの作品から

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「大きな横たわる裸婦」

モデルの女性は不自然に首を捻じ曲げて暗くくすんだ色で描かれています。
ピカソは後にこう語ったそうです。
「私は戦争を描かなかった。だが、戦争の時代に描いた作品には、戦争が存在している。」

ピカソのスケッチ画とパステル画「座って足を拭く裸婦」です。いずれもいわゆる「ピカソの絵」とは趣を異にしていますが、力強い手の表現にピカソらしさが感じられます。素晴らしいデッサン、パステルでのやわらかな表現が心に響きました。

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対象を確かに見据える天才の眼、吸い込まれるような色彩のハーモニーを感じられる次の二つの作品も心に残りました。

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「彫刻家と彼の彫像」

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「窓際の静物 サン=ラファエル」(1919年)

3 クレーの作品の中から

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「時間」

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4 マチスの作品から

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まるで東京オリンピックのピクトグラムのような切り絵です。

5 ジャコメッティの彫刻とピカソの大作

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最後の部屋でジャコメッティの彫刻とピカソの大作に見入る人々です。 

展覧会を見終わって、心地よく満ち足りた気持ちになりました。ベルクグリューンの美学によって構成された統一感が流れていたからかもしれません。一枚一枚の絵に作家の魂が込められているような気がしました。
ご紹介しきれなかった作品にも心に残ったものがいくつもありました。
国立西洋美術館での展覧会は1月22日まで開催されていて、そのあとは大阪で開催される予定です。
もし、興味のある方は、ご自分の眼で鑑賞していただければと思います。さらに、音声ガイドを聴きながら鑑賞されることと、気に入った作品が多数あった場合は図録を求められることをお勧めします。図録を買わなかったことに少し後悔している私からのアドバイスです。

その後、国立西洋美術館の常設展を見ました。松方コレクションの数々が落ち着いた気分にしてくれます。今回はルノワール、モネの作品もありました。個人的に気に入った2枚の絵です。

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〇詳しくは、こちらをご覧ください。
国立西洋美術館 ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

大阪では、大阪国際美術館において開催されます。
会期:2023年2月4日(土)〜5月21日(日)
〇詳しくは、こちらをご覧ください。
国立国際美術館

(担当:Giglio)

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