さつき会ブログ

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カリフォルニア州は宇宙探求の搭乗口

カリフォルニア

カリフォルニア在住のさつき会会員、林左絵子さんに「宇宙探求の旅」の案内をしていただきました。
このブログを通して、皆様にも「ダークなカリフォルニア旅行」を楽しんでいただければと思います。


 夏休みにカリフォルニア旅行、というと皆さんはどのような所を思い浮かべられるでしょうか。南北に長く、太平洋に面しているこの州は、ほぼ日本と同じ広さ、人口は日本の1/3ぐらいです。
 比較的温暖だった気候のおかげで豊かな森林を含む国立公園、スポーツの盛んなところ、あるいはハリウッド、ディズニーランド、ユニバーサルスタジオ、など。日本からの移民も含め、古くから日本との交流があります。かなり明るいイメージなのではないでしょうか。そこで今回はダークな面をご紹介したいと思います。ただしこの「ダーク」は、星々をよく見る、また宇宙空間を表現しようとして引っ張ってきた形容です。

ロサンジェルス

写真:ロサンジェルス空港着陸前、ダウンタウンの高層ビルと密集した建物群、遠くにサンゲーブリエルなどの周辺山地。地表近くの空がけむっているのは、(この時は)山火事ではなくスモッグ。それがなければ、雲一つない青空。



ロサンジェルス国際空港
 日本の各地の空港から太平洋を超えて、南カリフォルニアのロサンジェルス国際空港に着くと、ほとんどいつでも空が明るい。昼間は天気が良いために明るい、夜は街の活動で明るい。空港を抜け、ダウンタウンに向かうフリーウェイ(自動車専用道路、無料)に載ると、空港周辺にハイテク企業の建物が並んでいるのが目に入ります。
  東側に開けているのは電気自動車テスラの工場群とオフィス。そのどれかが、ロケットや宇宙船を扱うスペースXの管制の建物。国際宇宙ステーションに宇宙飛行士たちが往復する際に、ストリーミング画面に映るあの管制室があるところです。
  反対の西側、丘陵地帯のビバリーヒルズの近くにはカリフォルニア大学ロサンジェルス校があります。物理や天文の研究も盛んに行われていて、天の川の中心部にブラックホールが存在することを示したアンドレア・ゲエツは、2020年に女性の天文学者として初めてノーベル物理学賞を受賞しました。アンドレアはハワイ島にある望遠鏡をよく使っています。同年のノーベル化学賞を受賞したのは2人の女性化学者ですが、そのうちの1人はハワイ島ヒロの出身、地元の公立高校を卒業しています。自分が長いことハワイ島に暮らしていたので、このような地縁を勝手に喜んでしまいました。

グリフィス天文台 とカーネギー天文台
 旅を続けましょう。フリーウェイを北上してパサデナ市に至ると、カリフォルニア工科大学とジェット推進研究所があります。市民天文台の草分けの一つ、グリフィス天文台、また宇宙膨張を示す観測が行われた2.5メートル望遠鏡のあるウィルソン山天文台やそこを運用していたカーネギー天文台などが近くにあり、米国が関わる2つの次世代光学赤外線望遠鏡本部もパサデナにあります。グリフィス天文台からは、「Hollywood」の標識がよく見え、「Back to the Future (1, 2)」「ラ・ラ・ランド」「スタートレック」などさまざまな映画やテレビのロケにも使われました。
天文台1

写真:グリフィス天文台。1935年から市民に公開されている天文博物館。展示を見るだけでなく、できるだけ触って理解できるよう工夫されている。ロサンジェルスの市街地を一望にできる。

カーネギー天文台

写真:カーネギー天文台本部。右側の針葉樹との間、遠くに見えるサンゲーブリエル山地に見える白い塔が、ウィルソン山天文台の施設。ウィルソン山天文台は1904年の開設なので、120年近くの歴史を持つ。ここの2.5メートル望遠鏡(=100インチ)を使い、エドウィン・ハッブルが膨張宇宙の発見につながる観測を行った。自分が住むアパートからもこの塔が見えるので、30メートル望遠鏡(=100フィート)作りに気合が入る。性能を100年は持ち堪えられるようにしたい。

パサデナ市を中心とした宇宙研究機関や基地
 パサデナ市は、ロサンジェルス市をはじめとするロサンジェルス郡の人口密集地帯を避け、郊外にあり、山に近いので少し涼しく、昔は避暑地として親しまれ、また広い土地が使えたのでした。北部・東部の州から避寒のために来ることもあったようです。東京都・神奈川県にありながら混んだところから少し離れている、国立天文台(東京都三鷹市)やJAXA宇宙科学研究所(神奈川県相模原市)のようなものかもしれません。
 さてカリフォルニア州には、宇宙から地球を調べたり、宇宙での活動を進めるための研究機関や基地もあります。北部のサンフランシスコ、サンノゼ、またシリコンバレー周辺と南部のロサンジェルス内やその付近に本部があったり、そこから離れた山地や砂漠に研究施設や打ち上げ基地があったりします。スペースXの管制本部がロサンジェルス郡にあることは既に触れましたが、ロサンジェルスの北にあるヴァンデンバーグ宇宙軍基地(「空軍」ではなく「宇宙軍」)からファルコンロケットを使い、海洋調査衛星や通信衛星などが打ち上げられています。昨年11月には、地球への小天体衝突回避策のテストのために2つの小惑星の進行方向を変えるテスト機が打ち上げられました。今年の11月にその試験が行われる予定で、どうなるかドキドキものです。
 パサデナから近いパームデールには、地球人として月面に初めて降り立ったアームストロング宇宙飛行士の名前を冠した研究センターがあるのですが、ジャンボ機に搭載した空飛ぶ望遠鏡の基地でもあります。雲より上を飛ぶことで、雲つまり地球の水(水蒸気)の影響を最小限に抑えることができ、たとえば月の岩石に水分が含まれていることを発見できています。2020年10月に発表されたこの研究は、月のでき方、ひいては地球のでき方を調べる上でとても重要な発見でした。ただしその水分を搾り取ることができても、おそらくサハラ砂漠の水分より少ないようで、人間が長期に月面滞在する助けにはならないでしょうが。 

日本の貢献も大きいアルテミス計画
 8月29日にフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げ予定で、月を周回することになっているアルテミス1号は、2号での有人飛行に向けて打ち上げ機と宇宙船の性能を証明しようとしています。カリフォルニアに限らず、あちこちにある企業や研究所が力を合わせて作ってきています。人類がもっとも最近に月に降り立ったのが1972年のアポロ17号によるものでしたから、もしアルテミス2号が月に到着すると50(プラスアルファ)年ぶりになるわけです。しかも今回は女性宇宙飛行士も含まれ、月面の長期滞在に向けて計画が進められています。
 国際宇宙ステーションもそうですが、アルテミス計画でも米国以外の国からの物と人の参加が重要な役割を持ち、日本の貢献も大きいものがあります。日本からの女性専門家が月で研究開発に活躍する日(夜?)もそう遠くない、とワクワクしながら月を見上げています。

林 左絵子(1982年理学部、1987年大学院)



(担当 Giglio)


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コメント

壮大なスケールの逸話に心躍りました!

真っ青な空と白い天文台のコントラストの写真に、思わず引き込まれました。そして、壮大なスケールのロマン溢れる逸話の数々に心躍りました。しかも日本の貢献も大きいとは!林さんも、その一翼を担っておられるのですね。林さんや日本人の専門家のご活躍を私もワクワクしながら見守りたいと思います。

2022.09.10  ゆっちょむ  編集

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